ウィッグセットをしていると必ずと言っていいほど耳にするようになった「ふかし」。
毛に厚みを持たせ、ボリュームが出すことができます。
また、すべりやすい合成繊維でできたコスプレウィッグでも毛同士が絡みやすくなるため、セットのしやすさが格段に上がるのが大きなメリットです。
ふかしをするにはどんな道具を使えばいい?うまくふかしを入れるコツは?強弱はどうやってつけるの?…等、
「ふかし」について美容師免許を持つ現役コスプレイヤーが徹底解説します!
「ふかし」についての基本知識
「ふかし」って何?
本来のウィッグにおける「ふかし」とは、毛の根元に逆毛を立てることで、ボリュームを出す加工方法のことを指します。
ドライヤーやアイロンなどを用いて熱加工し、冷ますことで毛をにダメージを与えていく技法を指します。
「ふかし」を入れるために必要な道具
「ふかし」を入れるために必要な道具をご紹介します。
1.ワッフルアイロン
ワッフルアイロンとは、本来ウェーブなどを手軽に入れることのできるヘアアイロンです。
ウィッグセットではふかしを入れるにあたり、熱加工のために必要なアイテムです。
2. 軍手
高温で熱加工をするため、火傷防止のためアイロンを持つ手とは反対の手に着用します。
3. ふかしコーム
4. ダッカール
ブロッキングに必要なアイテムです。
実際にふかしに挑戦してみよう!
工程1:ブロッキング
ふかしを入れるときは熱加工をする毛以外をまとめておくことが重要です!
ブロッキングをせずにふかしを入れると、熱を加えたくない毛を巻き込んでしまい、上手くふかしを入れることができなくなってしまいます。
まずコームのテールを使い、毛のたばを2〜3cm程かき分けます。
大体ネット1〜2列分程度の厚さを取るようにしましょう。
毛の束が分厚すぎると熱が伝わりにくくムラができるので、
均等にふかしを入れるために薄く取るのがポイントです。
工程2: ワッフルアイロンで熱加工
ワッフルアイロンは200〜220℃の高温に設定しましょう。
ここで必ず軍手を装着することを忘れないでください。
ワッフルアイロンは毛に対して少しナナメに入れるのがポイント。
真横に入れるとナミナミとしたワッフルアイロン特有の跡が付きやすくなるので注意しましょう。
工程3: ふかしコームでとかしながら冷ます
熱を入れたら、ふかしコームで熱を加えた毛をとかします。
冷えたコームで空気を入れながらとかしていくと、ナミナミが消え、ふかしの入った状態に変身!
ふかしの強弱を操ろう
ふかしは強弱をつけることが可能です。
強弱をつけるためには「工程3」の冷ますタイミングが重要です。
熱を加えてから、素早くとかすと“弱”
熱を加えてから、少し時間を置いてからとかすと“強”
また、毛のツヤを残したい場合は素早くとかすとツヤを残したままふかしを入れることができます。
ワッフルアイロンなしでできる「ふかし」のやり方
ストレートアイロンを使ってみよう
「ワッフルアイロン」を購入してみる前に、自分の手持ちのアイテムでふかしを入れてみたい人におすすめしたいのがストレートアイロンを使用したふかしの方法。
工程1:ブロッキング
この工程はワッフルアイロンでのふかしと同じように行っていきましょう。
工程2: ストレートアイロンで熱加工する
ストレートアイロンは180〜220℃以上の高温に設定しましょう。
ここでも必ず軍手を装着することを忘れないでください。
ストレートアイロンは低温しか出ないものもありますが、温度が低すぎるとうまくふかしが入らない可能性がありますので注意してください。
工程3: 逆毛を立てて素早くとかす
毛が冷める前にコームやふかしコームを使って逆毛を立てます。
逆毛を立てたら毛が冷めるのを待ちましょう。
毛が冷めたことを確認したら、タングルティーザーやくしを使い毛をほぐしていきます。
完全に毛が解けたら、ふかしの入った状態になっているはずです。
- クシよりもタングルティーザーがほぐしやすくてオススメです。
- もしほぐしたときにふかしが入っていない場合は、熱がちゃんと入っていないのが原因です。
逆毛を素早く立てることと、しっかりと冷めてからタングルティーザーでほぐすことに気をつけて再チャレンジしてみてください。
「ふかし」を入れた毛のセットの仕方
外はねを作ってみよう
ふかしを入れたら実際にセットしてみましょう。
今回は外ハネの作り方を解説します。
まず、ワッフルアイロンとは別に100℃前後の低温に温めたストレートアイロンを用意します。
その低温のアイロンで軽く挟み、外ハネを作ります。
このとき、ぎゅっと強く挟んでしまうとふかしが取れてしまうことがあるため気をつけましょう。
手のひらに毛を乗せ、外ハネをキープしたまま少し冷まします。
ハードスプレーを遠めから吹きかけます。
ハードスプレーを吹きかけた時に少し毛が散ってしまうのでコームのテールで整えましょう。
最後にドライヤーの温風を遠めから当ててフィックスさせます。
おすすめのセット用アイロンはこれ!
セットするときは、小回りがきく小さくて細いアイロンがおすすめ!
「ふかし」を使って制作したウィッグを紹介!
ふかし”弱”のウィッグセット例
全体のツヤは残したまま、セットしやすいように毛先は少し強めにふかしを残しています。
このウィッグはほとんどふかしを入れていませんが、ボリュームがない前髪にだけふかしを入れました。

ふかし”強”のウィッグセット例
しっかりとふかしを入れ、あえてツヤは残さず二次元的なスタイリングをしています。
このウィッグは全体に強いふかしを入れてから形成し、さらにその上から3色の青い塗料で塗装をしています。

ふかし”中”のウィッグセット例
-
- 弱と中の中間で、慣れてくるとしっかりふかしを入れつつも自然に見えるような加工をすることができます。
ふかし”中”のウィッグセット例①
-
- こ
- のウィッグは中にスポンジとワイヤーでそもそものフォルムを作り、上からふかしを入れた毛を貼り付けています。

ふかし”中”のウィッグセット例②
このウィッグは中にスポンジなどを入れずにツインテールのぽよんとしたシルエットを出したかったので、その箇所の内側だけ強めに入れています。
外側にくる毛はツヤが残る程度のふかしにとどめています。
また、「ポニッチメント」という特殊なアイテムを使うことでツインテールを取り外し可能にしています。
ふかしを入れるとこういった便利ツールに貼り付ける際、食いつきも良くなります。
ポニッチメントの商品ページ:https://magimono.official.ec/items/103525715

ふかし”中”のウィッグセット例③
これはワイヤーにPPテープを巻き、その上から毛束を貼り付けて作成したウィッグです。
ドリルツインテールなどは毛が反発して剥がれやすいのが難点ですが、ふかした毛同士は絡みやすいため、貼り付けの強度も強くなります。

ふかしのよくあるQ &A
Q.1 ふかしを入れた毛は元に戻せるの?
A.元に戻せる場合もあります。基本的には完全に最初の状態には戻りませんが、ストレートアイロンでプレスして、ある程度元に戻すことが可能です。
ただし、かなりキツめにふかしを入れていたり、熱ダメージでウィッグがかなり傷んでいる場合は難しい場合もあります。
Q2.カラースプレーを施した後でもふかしは入れれる?
A.いいえ。基本的に、カラースプレー塗装をした後の毛にふかしを入れることはできません。カラースプレーなどで塗装する場合は全てのセットが終わってから行いましょう。
逆に、染色(みやこ染などで染める)場合は、先に染色をしましょう。
(染色→ふかし→セットの順番)
Q3.ふかしだけでボリュームが出せない場合、どんなものを使ってボリュームを出せますか?
A.ふかし以外であれば、ボードなどで形を組み、そのボードに毛束を貼り付けていく「造形」の技法を用いた方法があります。
また、中に綿を入れてその上から毛束を貼り付けることも可能です。
Q4.ふかしを入れると重くなりますか?
A.いいえ。むしろ軽くなります。
その理由は、ふかしが入った毛は普通のウィッグよりも、毛と毛の隙間に空間ができることでボリュームができているからです。
そのため、本来よりも毛量自体は少ない状態でもボリュームを出すことができるため、実質的な大きさはかわらなくても毛の量が減るため、質量や重量は減らせるのです。
これは「ふかし」を入れる上での大きなメリットにもなります。
ふかしを入れていない毛だけで作った超次元ウィッグよりも、ふかしを入れた毛で作る超次元ウィッグが軽いのはそのためです。
Q5.ワッフルアイロンでふかしを入れると毛にナミナミが残ります。これが嫌ですがどうにかなりませんか?
A.ワッフルアイロンのナミナミを残したくない場合は、熱が冷めきる前にふかしコームを入れる必要があります。
ただし、このタイミンングも早すぎるとふかしが入らないこともあるので、何度も挑戦して自分の手と感覚でこのタイミングを覚えていくしかありません。
失敗を恐れずチャレンジしてみてください!
また、ワッフルアイロンをまっすぐ横に入れるのではなく、少しナナメにして入れ、さらに反対のナナメで入れ、また反対のナナメに入れる…を繰り返しててみてください。
要するに、ランダムにワッフルアイロンを入れるということです。
するとナミナミが一定ではなくなるため、跡がつきにくくなります。
まとめ
「ふかし」をマスターすることで、造形ウィッグが作りやすくなったり、ツルツルと滑る毛が扱いやすくなったり、ウィッグセットのQOLは間違いなく上がるでしょう。
だからと言って、必ずふかしを入れて作らなければならないというものでもありません。
あなたのスタイルに合わせてふかしを“活用”し、素敵な作品作りをしてください!